筆耕を目指す方へ
- 筆耕会社で書くにはどうしたら良いですか?資格も必要ですか?
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資格についてですが、あくまで「資格の有るなし」に限って言えばこの業界では無意味と言っても良いと思います。通信教育などで資格をとるまでにいかに充実した 内容で勉強し上達できたかの方が遥かに重要です。筆耕会社さんの審査基準は100%実力で決まりますので、資格があるから明日から来て書いて下さいはまずありえません。資格そのものでなく資格をとるまでのその内容が重要だと思います。
初心者の方が筆耕会社を目指すには下記のパターンが最良かと思います。
① 週何回か筆耕教室や講習会・カルチャー教室(筆耕会社・その他が運営する)に通う。無理であればネットで探すなどして通信教育を受ける② 筆耕会社に見本を送る・持って行く本来はもう少し複雑な面もあり、また実現するまでに数ヶ月~数年かかるかもしれません。
筆耕会社に所属するには、当たり前のことですが書くことが、大好きであるということが大前提であると思います。黙々と一日中原稿を見てひたすら書く。時には徹夜、忙しければ休日も関係ありません。また実力の世界でありたとえ筆耕会社に所属できたとしても金銭面でも格差が生じる、かなり厳しい世界です。有段者 書道歴何十年 たとえ書道の先生でも簡単にはいかない狭き門というのが現状です。一概には言えませんが書道文字と 筆耕会社の文字は根本的な考え方の違い・相反するものがあるというのも理由の1つです。
※ ここでいう筆耕会社とは都内・主要都市にありに事務員・社内で書く筆耕者(数人~20名前後)・在宅筆耕者も多数在籍している会社のことです。
私自信、都内筆耕会社に所属していた時には、一度の募集で、関東一円から100 名近く応募があったこともありました。一昔前では、経験が無くても見習いという形 で、入り練習してその後、正規筆耕要員として雇ってもらうケースも多く見受けられ ました。 現在では、そのほとんどが経験者優遇といった状況のようですが、経験有る無しに関わらず採用基準で最も重要とされる、「封筒宛名書きの見本の書き方とその練習法」をあげてみたいと思います。ご参考になさってください。
① 正方形をイメージさせる文字で
② かすれのないスッキリとした線質で
③ 黒々とした墨汁(中濃墨)で書く
④ 郵便番号はやや小さめに
⑤ 縦書き横書き両方マスターする
⑥ 字の大きさ太さに注意
封筒宛名書きは通常住所+名前(2行書き)から住所+社名+部署名+肩書き(4行以上)など1つの封筒に合計文字数約15文字~30文字以上書くことになります。 1つ1つの文字に四角形をイメージさせることでで全体にまとまりのあるもの になります。
筆耕会社の方が採用判断として重要視するのが、「ぱっと見」の印象です。 「きれい」「上手い」「まとまっている」といったごく単純なものです。実際に封筒を受け取った人が「おっ!」と思ってくれることがこの世界では必要不可欠だからです。そのためには汚れ・かすれは論外ですが、スッキリとした綺麗な線質で書く事で特に文字数の多い封筒などは好印象となります。
同じ字を書いても薄い墨と黒々とした墨汁を使用した場合では仕上がりの印象は全く違います。当然後者の方が白い封筒に対して綺麗で見栄えが良いものになります。筆耕業者の多くが濃いめ墨汁を使用しているのは、そのためでもあります。使用する紙質などにより濃さの調整も必要な場合もありますが、絶えず濃い目の墨汁で練習することをお奨めします。
意外と算用数字で書く郵便番号は軽視されやすいですが、毛筆で書くとなると案外難しいものです。郵便番号は枠いっぱいに書かず 枠の大きさの約6~7割位の大きさで右下隅に合わせて書こと良いとされています。
封筒宛名書きには縦書きと横書きがあります。個人宛では結婚式招待状(横書き中心)年賀状(縦書き)会社宛では総会・創立記念・役員交代(縦書き)外資系企業イベント・パーティー(横書き)など様々です。お客様の用途・希望によって両方書けるようにしておく必要があります。
全体をまとまりのある宛名書きをするために重要なことの1つに文字の大きさ・太さがあげられます。特に会社宛封筒では行数・文字数も多くなるため、あまり大きく太く書きすぎると字が主張しすぎてかえってごちゃごちゃとした感じになってしまいます。またそれに切手も貼るわけですからますます余白はなくなり、まとまりのない ものになってしまいます。特に会社宛は若干抑え気味に書くことで、全体のまとまり感を持たせることができます。
よく取引している業者の方などに「筆耕文字は書道と違うよね」ということを言われます。私自信、筆耕文字というのはどういうものなのか漠然としたした考えしか持っていませんし、そもそもこれが筆耕文字だというのもありません。
あくまで一般論となりますが、筆耕会社にいた 大先輩や師匠と呼べる方々が言って
いた沢山の言葉の中から1つを選ぶとすれば筆耕の文字とは「書いたものを受け取った人の10人中9人が綺麗だね・上手だねと喜んでくれる字」 という言葉が1番心に強く残っています。要は「万人受けする字」を書けという事で
した。
他には「ある程度個性を抑えていて癖の無い素直な楷書を書け」とも言われました。
個性的な字・独創的な字では人によっては好き嫌いが強く生じてしまう また筆耕会社で書く場合数百枚の封筒・賞状を手分けをして書く場合ある程度字の大 きさ 雰囲気が揃っていないとお客様によっては部分的に返品書き直しとなるケースがあると言われたことを思い出します。かくいう私自信これらに対しては一生もがき苦しむこととなると思います。 先輩の中には、不得意な字を練習をするとき、書道の手本だけでなくワープロ文字も見て全体のバランスや構成なども参考にしていました。これは筆耕文字ならではといったこととなると思います。 帝国ホテル・宮内庁などの筆耕も手がけたことがある経験豊かな方でした。 「 筆耕文字=大手筆耕会社の字」「筆耕文字=通信教育の見本」と考えている筆耕士の方々も多くいらっしゃると思います。特に老舗筆耕会社などは半世紀以上のお客様に喜ばれる字を書くノウハウがありますので筆耕会社に入り中で実際に書いている人の字を見て時間をかけ自然とその会社の字を身につけるまたは通信教育でもその手本を反復練習することでいわゆる筆耕文字となってゆくものだと思います。